私は、今年2022年に2021年度第3回選抜試験(2022年春学期入学)で、奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域 博士前期(修士)課程に合格しました。
NAISTに合格できたのは、希望研究室の先生、先輩及び同時期に入学する方々の協力はもちろん、ネット上で公開されている合格体験記のおかげでもあったため、少しでも今後NAISTの入試に挑む方々のお役に立てるように、自分の合格体験をブログに残すことにしました。
バックグランド
本題に入る前に、まず成績や出身を紹介します。
・ TOEIC L&R 910
・ 大学のGPA: 3.208 / 4.000
・ 香港中文大学 文学部 日本研究学科出身(副専攻:総合ビジネス Integrated BBA)
・ 早稲田大学商学部 1年間交換留学の経験あり
・ プログラミングスキル多少あり
(入試を受ける半年ぐらい前から業務委託かつリモートワークで都内にあるWeb・AI開発ベンチャー企業でWebエンジニアとしてフロントエンドの開発に従事していた)
・ 第一言語中国語(方言の広東語しかできない)、第二言語英語、第三言語日本語
本稿と他の体験記の違い
ネットに既にNAIST情報科学領域合格体験記が溢れているのに、なぜわざわざ合格体験記を執筆するだろうと疑問に思う方がいるかもしれないので、本稿と他の体験記の違いを説明します。
まず、ネットで公開されている合格体験記はほとんど全部第1回受験に合格した方が書いたものでして、難易度が最も高いと言われている第3回選抜試験に合格した方が書いた体験記は未だ見当たりません。
そのため、諸事情により、第1回と第2回の受験チャンスを逃し、第3回の試験を受けざるを得ない方の参考になれるように、第3回の試験体験を共有したいわけです。
また、私は他の方と違い、受験言語を日本語ではなく、英語にしたため、日本語が不自由な方、もしくは英語での受験に挑戦したい方に向けて、英語での受験のコツを紹介できたらと思います。
日本語がある程度できるのに、なぜ受験言語を英語にしたかと聞かれると、次の3つの理由があるからです。
・小論文を執筆する時も面接を準備する時も、参考文献を英語から日本語に翻訳するのが面倒ください
・日本語で数学を解くより、英語で解くほうが簡単で楽
・面接の時面接官に深く突っ込まれたくない
では、理由を1つずつ解説していきましょう。
・小論文を執筆する時も面接を準備する時も、参考文献を英語から日本語に翻訳するのが面倒ください
研究を進めていく中で、希望研究室の先生や他の学者の論文を大量に読まなければなりません。
しかも、ほとんどの論文は冗長な英文で書かれているため、日本語で小論文を執筆すると、冗長な英文を一々日本語に翻訳しなければならなく、極めて手間がかかります。
また、DeepL先生に頼るであろうが、翻訳にどれほど優れているであろうが、翻訳による伝達のロスは避けては通れないものなので、翻訳の手間を省くためにも、参考文献の要点を正確に伝えるためにも、英語で小論文を執筆し、面接を受けることにしました。
・日本語で数学を解くより、英語で解くほうが簡単で楽
東京大学大学院で数学関連の勉強をしている日本人の友人の話によると、日本語も英語もどちらもある程度できる場合、日本語で数学を解くより、英語で解くほうが簡単らしいです。
実際私は英語も日本語もある程度できますが、小学校から高校までずっと英語で数学を解いていたので、日本語より英語で解くほうが楽だと思います。
・面接の時面接官に深く突っ込まれたくない
面接官はほとんど全員日本人で、母国語が日本語なので、日本語で面接を受けたら、面接官からすると突っ込み放題になるのではないかと思います。
しかし、日本人の面接官は英語能力に限りがあるのです。
英語で受験すると、面接官に深く突っ込まれずに済むので、気持ち的にちょっと楽になるでしょう🥳
(もし運が悪く、帰国子女や英語母語話者の面接官に出会ってしまったらごめんなさい🙇🏻♂️)
なぜNAIST?
NAISTを選ぶ理由は主に3つあります。
まず、NAISTは他の大学院と違い、多様なバックグラウンドの方々を積極的に受け入れています。
私は大学の頃文学部に所属しており、情報系の知識が極めて乏しいため、情報系の試験がある東大といった名門校の入試は極めてハードルが高いですし、そもそも文系出身の方はあまりウェルカムされないのです。
NAISTは数学試験と面接しかないので、他の学校と比べて、文系生に優しいと言えるでしょう。
また、NAISTは他の大学院と違い、TOEICの受験期間の制限に関して割と緩い基準を設けています。
私が入試を受ける時は2018年4月以降の成績であればOKだったのですが、2022年4月以降受験する場合はTOEICの受験期間の制限はなしとなったようです。
ちなみに、私は2021年11月17日夕方特定技能2号対象拡大のニュースを見てから、すぐ大学院進学に踏み切ったので、改めてTOEICを受ける余裕はなかったです😞
さらに、NAISTの卒業生がみんな名だたる企業に就職しているようなので、さぞNAISTのキャリアサポートが手厚いでしょう。
ちなみに、滑り止めで東京都立産業技術大学院大学(AIIT)と京都情報大学院大学(KCGI)の入試を受けましたが、諸事情により、それらに進学しないことにしました。
(両校とも闇が深いので、いつかそれらの闇について記事を書こうと思います。)
面接までやっていたこと
研究室訪問
私は他の受験生と違い、入試を受ける前にやりたい研究は特になかったため、研究室を訪問する前に次のことをしました。
・研究室リストで研究内容が理解できそう、かつ業務内容に最も関連性がある研究室をピックアップする
・研究室の先生の論文を8-10本読み、要約する
・要約を読み、情報を整理し、まだやっていない研究テーマを見つけ出す
・その研究テーマについて、小論文のアウトラインを作成する
入試を受ける前に特にやりたい研究テーマがない方、ぜひ研究室を訪問する前に上記の手順を踏んで研究テーマを考えてみてください。
アウトラインを作成した後、「いつでも見学会」を活用し、オンライン見学を申し込みました。
研究室を訪問する時、希望研究室(ソフトウェア工学研究室)の先生から小論文のアウトラインをチェックしてもらい、小論文に関してのアドバイスや面接でよく聞かれる質問をもらいました。
優しい先生に出会えて本当に良かったな〜と今でも思っています。
ただ研究室を訪問する際に、先生に「公平を保つために、提出前に小論文を読めません。研究室の学生や卒業生も紹介できません」と言われてちょっとショックでした😱
(ちなみに、小論文で求められるものは研究室の先生によってだいぶ異なるようなので、「いつでも見学会」や「バーチャルオープンキャンパス」を活用し、小論文を執筆する前に先生にアウトラインを見せて、小論文の書き方や方向性を確認することを強くお勧めします!!!
ソフトウェア工学研究室の場合、「小論文を通じて受験生のことや研究の動機がわかる」ということが求められます。)
入学者選抜試験出願前手続き(永住者でも特別永住者でもない外国人のみ)
私は日本人でも永住者でも特別永住者でもないため、出願1ヶ月までに国際課に「留学生出願予定申出書」を提出しなければなりませんでした。
2022年4月以降受験する場合、出願2ヶ月前までに出願前サポートデスクに「留学生出願予定申出書」と「受入予定研究室通知書」を提出しなければならないようです。
入学者選抜試験出願前手続きは今後変わる可能性があるため、NAISTのサイトで最新の情報を確認すると無難でしょう。
小論文
小論文にうまく肉付けできるように、研究室を訪問した後、研究テーマに関連した論文をもう10本ほど読み、要約しました。
1月中旬まで仕事や他校の選考で多忙を極めたため、1月下旬からアウトラインや先生からもらったアドバイスに従って書き始め、1月31日に書き上げ、提出しました。
NAISTに提出した小論文がGitHubに上がっているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
ちなみに、小論文を提出した後、文章の後半に自分のことを「undergraduate」と書いてしまったといううっかりミスに気付きました😱
幸い文章の前半で自分の生い立ちをちゃんと説明したので、先生がなんとなく理解してくれたはずですが、そのうっかりミスで多少印象が下がったかもしれないかと思います🤦🏻♂️
小論文を提出する前に、オープンキャンパスで出会った希望研究室の先輩に添削してもらうのがベストですが、もしオープンキャンパスへの参加チャンスを逃したら、最低でも友人や家族に誤字脱字のチェックをしてもらいましょう🥺
英語
4年前就活のために、模試を4セットほど解いた後、急いでTOEICを受けて、910点を取りました。
前述の通り11月に急に大学院進学のことを決めて、TOEICを受ける余裕は全くありませんでしたし、910点で十分高いかと思い、当時のスコアレポートを提出しただけで、英語に関しては特に何もやっていませんでした。
補足:
私は3歳の頃から英語の勉強を始め、小学校の頃から大学までずっとほとんど全部の科目を英語で勉強しており、元々英語能力がある程度身についているため、あまりガッツリと対策できずに900点以上取れましたが、英弱の方は上記の勉強法を真似すると本番で即死するので、やめておいた方がいいです😅
英弱の方に次の勉強法をおすすめします😉
・定番のTOEIC単語帳 金フレを読み、知らない単語をピックアップして、意味を覚える
・《TOEICテスト直前の技術》を読み、TOEICの出題パターンを掴み、テクニックを身につける
・制限時間で模試を10セットほど解く(TOEICは体力と集中力の勝負なので、リスニングとリーディングを分けて解くのはNGです!🙅♂️)
・模試で間違ったことを復習する
数学
もう地獄と言っても過言ではないぐらい大変でした!しんどかった!
NAISTの入試を準備するまで、線形代数も微積も勉強したことは全くなかったので、本当に基礎の基礎のところから勉強を始めました。
しかも、1月に仕事などで忙しすぎて全く数学の勉強に時間を割けなかったので、2月から1ヶ月ほどガッツリと勉強し、ほぼ缶詰状態でした。
勉強の仕方や頻出項目がShotaさんの記事で詳しく紹介されているので、そちらを読んだほうがいいですが、一応私がやったことを共有します。
線形代数の勉強に関しては、よびノリたくみさんの動画を視聴し、線形代数の基礎を理解した後、指定教科書の問題をできるだけ解いていました。(線形代数の指定教科書は激ムズで人間が読めるものではないので、今思えば、当時マセマを購入すべきでした😞)
微積の勉強に関しては、指定教科書を読み、問題を解いていました。
教科書を何度も読んでもわからないところは、Khan Academyの動画で勉強しました。
その後、過去問を解き、単なる解けるだけではなく、本番で口頭で解く手順の説明もできるように準備しました。
ちなみに、勉強の際に次のツールを活用しましたので、もし良かったらぜひ使ってみてください。
・Symbolab -> 微積の計算や線形代数の証明など、何でもできる万能ツール
・GeoGebra -> 図を描くツール
・微分計算機
・積分計算機
(指定教科書のPDFファイルはこちらからダウンロードできますので、わざわざ指定教科書にお金をかける必要はありません。また、線形代数の指定教科書の回答はこちらからダウンロードできます。)
数弱の方へのアドバイス
1.余裕を持って勉強しましょう
私は数学試験の1ヶ月ほど前に勉強を始めたので、正直今数字を見るたびに吐き気がするぐらい毎日朝から晩まで勉強していましたし、数学の勉強は全く終わりませんでした。
数弱の方は数学試験の2ヶ月前から勉強を始めた方がいい良いでしょう。
2.数学が得意な方に助けを求めましょう
わからないことは1人でどう向き合っても理解できませんが、数学が得意な方に解説してもらうと、すぐ理解できますし、勉強のモチベにも繋がります。
私は当時アメリカのジョージ大学で機械系修士を勉強している友人に質問ばかりし、何度も助けてもらいました。
3.他の受験項目(小論文、英語)をなるべく完璧にしましょう
数学試験の点数はあくまでも全体の15%に過ぎません。
そのため、他の項目で高得点を取れば、数学試験で0点を取ってしまったとしても、合格する可能性が十分あります。
実際数学試験で1問も解けずに合格できた方が一定数いるので、数学の勉強でめげず、他の項目で点数を稼ぎましょう!
(だからといって数学の勉強を怠ってはいけないので、そこは要注意です!)
数弱の方はTOEICで高い点数(750点以上)を取り、小論文を執筆した後も面接の準備をした後もしっかりと希望研究室の先輩に確認してもらいましょう!
面接の準備
希望研究室の先生や先輩からもらった質問、過去の受験生ブログに記載されている質問及び自分が小論文で読んで考えた質問に対して、あらかじめ回答を考えておき、予想問題集を作成しました。
その後、希望研究室の先輩(M1生1人+2022年春学期に博士後期過程に進学するM2生1人)にチェックしてもらい、課題点や得られる見込みについてアドバイスをもらいました。
(2人に「予想問題集はよくできており、改善点があまりない」と誉めてもらったので、アドバイスはちょっとしかもらえませんでした😅)
予想問題集(質問+回答)がGitHubで公開されているので、面接の準備のためにぜひ覗いてみてください😉
本番
受付
Webex Meetingに入室した後、まず名前と受験番号を聞かれ、パスポート(日本在住の場合受験票)の提示を求められました。
その後、希望研究室(第1志望から第5の志望まで)の番号を聞かれましたが、希望研究室の名前と先生の名前しか知らなかったので、試験管の指示の通り、急いで受験2週間前にもらったドキュメントを見て、番号を確認しました。(マジ焦ったわ〜😢)
今後受験する方はちゃんと希望研究室の番号をあらかじめ確認しておきましょう!
数学試験
運が良くて、過去問と比べて簡単な問題が出ました。
試験官からヒントをもらったり、回答の正否を確認したりしつつ、問題を解いていました。
微分の問題は自力で解いて、ロピタル定理のことを説明することができました。
線形代数の問題に関しては、半分は運が良くて、回答が当たりましたが、残りの半分は試験官のヒントに基づいて解いてみましたが、時間切れで解き切れませんでした。
当時出た数学の問題はGitHubで公開されているため、練習のためにぜひ解いてみてください😉
面接
まず、面接で聞かれた質問を晒します。
1.Please tell me the overview of your research. (リサーチの概要を教えてください。)
2.What kinds of rules are expected? (どんなルールがありそうですか?)
3.How are you going to collect the data of rules? (どうやってルールのデータを集めますか?)
4.Who will provide you with financial support? Are you going to support yourself? (誰が経済的な支援をしてくれますか?ご自身ですか?)
5.How do you learn programming? (普段どうやってプログラミングを勉強していますか?)
④を除いて、全ての質問が事前に予想したものなので、あまり焦らず、予想問題集の通り回答できたかと思います。
ただ、最初の時面接官がジャパニーズ英語で発音した単語「overview」(「オッパービュー」と発音したかな)を聞き取れなかったので、ビビりながら何度も聞き返しました😨
また、途中で聞き取れない部分がいくつもあったため、不明点を確認しつつ、なんとなく面接を進めてきました。
英語受験を希望される方は、「いつでも見学会」や「バーチャルオープンキャンパス」で希望研究室の先生と英語で会話してみて、先生の発音のパターンを掴んでおくと良いかもしれませんね😉
(研究室訪問の時、先生と日本語でしか喋らなかったため、面接を受けるまで先生の英語能力や英語発音の特徴は全く分かりませんでした😓😅)
結果
前述の通り無事合格しました。
2021年度3回目の入試に合格した方は5人しかいなく、意外と少なかったな〜と思います。
2月に入って以来ずっと院試のことを心配しており、下痢やめまい、食欲低下や睡眠障害などに苦しんでいたので、無事受かって本当によかったです。
そのおかげで、上記の症状がやっと消えました。
これからNAIST生活を楽しみつつ、就職活動頑張るぞ!💪📛
後書き
大学院入試の結果によって人生が大きく変わるので、これからNAIST入試に挑む方は当時の私と同じく、とてつもないプレッシャーを感じるでしょう。
特に外国人は、場合によってNAISTに合格し、博士前期課程を卒業したら高度人材ポイント制で30点を上げることもあるので、永住申請の居住年数の要件を緩和するためにNAISTに合格することは極めて大事です。
(30点の内枠:最終学歴が学部卒から修士卒になる 10 + 本邦の高等教育機関において学位を取得 10 + 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者 10)
私も一時期NAISTの入試で精神的に病んでいたので、その大変さが十分わかっているはずです。
NAISTの入試で何か困っていることがあれば、遠慮なく下記のメールアドレスやTwitterのDMでご連絡ください。
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少しでもお役に立てれば幸いです。